近江高校、その敷地内にある学生寮の一室で。
「いやー、まさかあんなことになるとはね」
「ほんとだよ……というか、なんで私まで……」
部屋の主である2人の少女が、部屋の真ん中で向かい合っていた。
1人は、この部屋の主であり、この学校の生徒でもある少女――有村友美だ。
もう1人の少女と向かい合いながら、彼女はどこか不満げな表情を浮かべている。
そんな彼女の服装は、普段着ではなく制服だった。
それも、今着ているものだけでなく、クローゼットの中に仕舞われている予備のものも含めれば、合計4つも持っているらしい。
「……ま、まあ、私は別に構わないんだけど……でも、いいの?こんなことしてて……」
「……うん、いいよ。
どうせ暇だし」
そう言って、少女は小さく笑った。
しかし、すぐにその表情を曇らせると、今度は申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「――ごめんね、こんな面倒なことに付き合わせちゃって」
「ううん、全然大丈夫だよ。
むしろ、私が勝手に首を突っ込んだみたいなものだから」
「……そっか、ありがとう」
少女の礼の言葉に、友美は微笑んで返した。
そして、視線を自身の足元へと向ける。
そこには、小さな段ボール箱が置かれていた。
「それにしても、本当に良かったの?」